お正月やお祝いの席でよく食べられる蟹。じつは蟹はとても縁起がいい生き物ということを知っていますか?ここでは蟹が縁起がいい6つの理由とお正月に食べられる2つの理由や3つの効果、さらに「蟹の恩返し」という伝承を料理が好きな筆者が詳しく解説しましょう。

ライター/柚葉黎子(ゆずはれいこ)

蟹が縁起がいい6つの理由

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日本では、蟹はとても縁起がいい生き物と古くから伝えられています。そのためお正月やお祝いの席で蟹はよく食べられていますよね。ここでは蟹を食べることはとても縁起がいいといわれる6つの理由を解説しましょう。

理由1 水陸両性という習性から不思議な力があると信じられていた

蟹の習性で特徴的なことは蟹が水陸両性の生き物であること。水陸両性とは、陸上でも水中でも呼吸をし、生きることができるということ。人間などの哺乳類は、陸上だけでしか生きることができません。魚は水中だけですよね。蟹は水中でも陸上でも生きることができるとても不思議な生き物です。

また日本では古くから水は霊的なもの陸は現実社会を表すとされていました。陸上でも水中でも生きることができる蟹の不思議な習性から蟹には霊性という超自然的な力があると考えられました。

理由2 産んだ卵をふ化まで抱いて育てるから

蟹は産んだ卵を孵化するまでしっかりと抱えています。この習性は人間以外の生き物ではあまり見ることのできないもの。蟹の自分の子どもをしっかりと守り育てるさまは、人間の子育てに通じるものがあると感じたのでしょう。蟹は自分の子どもを孵化するまで育てる不思議な生き物として縁起がいいといわれるようになったということです。

理由3 成長するために何度も脱皮するから

蟹は大きく成長するために生涯で何度も脱皮をしますよね。いにしえの人々は、脱皮しながら成長する蟹の姿から過去を脱ぎ捨て成長する「生まれ変わり・再生」という姿を意味すると考えました。私たちも蟹のように古いものを脱ぎ捨て新たに出発することができるようにと願ったのでしょう。

理由4 蟹のハサミが勝利のしるしといわれるVサインに似ているから

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蟹のハサミを眺めていると何かに似ている気がしませんか?蟹が縁起がいいといわれる理由のひとつに蟹のハサミが勝負に勝ったしるしであるVサインに似ているためといわれています。よく観察してみると確かに蟹のハサミはVサインに見えますよね。そのため蟹はとても縁起がいいとされたようです。

理由5 蟹を茹でると赤くなるから

蟹はさまざまな色をしていますよね。中には緑色をした蟹もいますが、蟹をお湯でゆでるとどのような色をしている蟹でもすぐに赤くなります。「赤」は日本においてはとても縁起がいい色。勝利や魔除け・厄除けの意味を持つ赤色に変化する蟹は、とても縁起がいい生き物といわれるようになりました。

理由6 中国では蟹の甲羅が受験に合格する象徴

中国では「科挙」という全国統一の試験が古くから行われていました。「科挙」に合格すると明るい将来と裕福な暮らしが約束されていたのです。この「科挙」の合格者は「一甲」「二甲」「三甲」というランク付けがされていました。合格者を表すこの呼び方から、甲羅を持つ蟹を食べることで「甲」を得ると考え、難しい試験も合格できるといわれるようになりました。この考え方が日本にも伝わり蟹は縁起がいいといわれるようになりました。

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