ライター/柚葉黎子(ゆずはれいこ)
煩悩とは?
image by iStockphoto
「煩悩」という言葉は仏教で使われる用語で「人々を煩わせ悩ませる心」のこと。親鸞聖人は「煩悩は人間を苦しませるもの」といわれています。ここでは私たちを煩わせるという煩悩の意味と煩悩の数について考えてみましょう。
煩悩の意味は
人間として生きていく目的は幸せに生活したいということ。この目的のために私たちは生きていますが、人生は決していいことばかりではありません。仕事がうまくいかない、仲間や仕事上の人間関係がうまくいかない、家族や恋人との関係がぎくしゃくしている、自分より仕事ができないのに出世した人がいるなど欲望にさいなまれ苦しむことばかりですよね。一般的には煩悩とは私たちの心の欲望による苦しみを意味しているといわれています。ただ仏教では欲望だけではなく、自分自身を自分や他人に恥じる心や自分が失敗したことを隠そうとする気持ちなども煩悩としていますよ。
煩悩の種類は108つある
煩悩は果たしていくつあるのでしょうか?煩悩といわれる人間の欲望や様々な心の葛藤は数えきれないほどあるといえるのではないでしょうか。仏教では当初煩悩は「八万四千」あるとされていました。つまり煩悩は数えきれないほどたくさんあるという意味。
その後『倶舎論(くしゃろん)』という仏教の基本文献に煩悩は108つとまとめられ、現在ではほとんどの宗派が煩悩の数は108つとしています。
煩悩の中で最も恐ろしい三毒とは?
image by iStockphoto
煩悩には108つの種類があるといわれていますが、あなたは三毒(さんどく)といわれる煩悩を知っていますか?この三毒といわれる煩悩は最も強いものといわれています。ここでは貪欲(とんよく)・瞋恚(しんい)・愚痴(ぐち)という三毒といわれる煩悩を解説しましょう。
貪欲(とんよく)・人間が持つすべての欲望のこと
貪欲とは、あなたの心の中にあるさまざまな欲望のこと。あの人の心が欲しい、幸せになりたい、お金がもっと欲しい、家が欲しい、子どもが欲しいなど数えるときりがありませんよね。このような様々な欲望のことを貪欲というのです。
貪欲が三毒のひとつといわれる理由は、一つの欲望が満たされるとすぐに次の欲望が顔を出すから。まさに人間の欲望は際限なく生きている間ずっと続くといわれています。
瞋恚(しんい)・思い通りにならないことへの怒り
image by iStockphoto
瞋恚とは人間が持っている怒りの心。人は誰でも怒りの心を持っていますよね。その怒りの原因のほとんどは自分の思い通りにいかなかったこと。誰かに騙された、メールの返事を期待していたのに返事がこない、ここまでしてやったのにその態度はなに?というような日常に起こる些細なことでも人は怒りの感情を覚えてしまいます。この怒りの感情は、貪欲と同じように人生の最後までなくなることはないといえるでしょう。
愚痴(ぐち)・他人に対する妬みや嫉みの感情
愚痴とは妬みや嫉みの心。人間は自分が成功したとしても他人のことがとてもうらやましく見えてしまうもの。まさに「隣の芝生は青く見える」ということわざは、愚痴という煩悩を表現しているといえるでしょう。妬み嫉みの心もまた、貪欲や瞋恚と同様に生涯消えることのない煩悩といえます。