両面宿儺は鬼か?英雄か?
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このように両面宿儺はアニメに中では最強最悪の存在ですが、岐阜では英雄視されていることは前述の通り。果たして本当に宿儺は鬼なのか、それとも英雄なのでしょうか?
1.日本書紀では悪の権化
両面宿儺が初めて公の場面に登場してきたのは日本書紀。日本書紀は古事記と合わせて「記紀」とも呼ばれていますが、古事記は神話を重点的に話が進んでいく内容となっています。片や日本書紀は漢文や太古に起こった出来事を年代順に書かれており、当時では中国語がある種の国際的な標準語となっていました。その中で両面宿儺は悪の権化として描かれることになっていきます。
2.飛騨では観音の化身
しかし、飛騨では観音の化身として崇められています。高山市にある「普門山善久寺」には、宿儺の出現を詳しく伝えている両面宿儺出現記という記録が残っているのです。
ここでは仁徳天皇時代に日面村の出羽が平の山上が激しい鳴動があり、岩壁の中かラ前兆6mもある両面宿儺が甲冑に身をまとい、手にまさかりを持って忽然と出現したことが記録されています。
これを見た村人たちは大いに恐れおののいたのですが、宿儺は大声で自分が仏法守護・王法一大事の時のために出現したことを伝える。そして、宿儺は印を結んで十一面観音に変化したというのです。
3.両面宿儺が開山したお寺
宿儺が開山したお寺が地元に残っています。袈裟山千光寺というお寺ですが、標高約1000mの山上にある千光寺は、人界と隔絶されたまさに仏法修行の場所を感じさせるところ。この千光寺には4体の宿儺像を祀られているのです。
日本には鬼を操る鬼神もいた
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このように両面宿儺は見る者によって立場によって、鬼として扱われたり英雄として扱われてきたわけです。しかし、このようなことは決して宿儺だけではありません。日本には昔、鬼を操る鬼神がいたことをお忘れではないでしょうか?
1.式神を操る鬼神・陰陽師
今から遡ること平安時代は魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)する頃。この時代に式鬼という鬼を召喚して自分の手足のように自由自在に操る人物がいたのです。その名は安倍晴明。
清明自身は人間でありながら、天皇からも絶大な信頼を寄せられていた陰陽師であったことは、多くの人が知っていることだと思います。彼は呪術により鬼を操り、魔物を追い払うだけでなく占星術により世の中をより良いものにしようとしていたことでも知られている人。ただ時には魔の存在として畏怖していた人もいたはず。それだけに鬼神としての存在だったのかもしれません。